フィル・ウッド氏講演「インターカルチュラル・シティ」(1/20)@青山学院大学 [報告]

「インターカルチュラル・シティ---文化の多様性を活かす都市政策の実践---」(1/21)
青山学院大学国際交流共同研究センター講演会

講師:フィル・ウッド氏
日時:2012年1月20日(金)14:00-16:00
場所:青山学院大学・総研ビル3階第11会議室
主催:青山学院大学国際交流共同研究センター

司会の飯笹佐代子博士(青山学院大学国際交流研究センター)
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英語で講演するフィル・ウッド氏
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「インターカルチャリズム」の先駆的な提唱者であるフィル・ウッド氏は「インターカルチュラル・シティ」のテーマを取り上げ、都市の発展において多様な人々の交流が生み出す利益について講演を行った。

ウッド氏は、多様性を脅威としてではなくチャンスとして捉えるような意識改革の重要性を強調するとともに、ヨーロッパでこれまで取られてきた移民のための都市政策、具体的にはイギリスの「ゲストワーカー政策」、フランスの「同化都市政策」、北欧諸国の「多文化都市(マルチカルチュラル・シティ)政策」などを批判的に取り上げた。そのような移民を含む多様な人々の交流を阻害する政策を取るのではなく、都市は「インターカルチュラル・シティ」のアプローチを取るべきで、多様な人々が交流するための目的や誘因を与え、また交流の場所、制度、支援者、手段も提供する必要がある。つまり、都市は静的な機械ではなく、動的なエコシステムとしてみなされるべきで、多様な人々の交流の優位性を達成するためには、対立を抑制するのではなく明らかにしてマネージすることが望ましいというのがウッド氏の主張であった。

最後に、日本のインターカルチャリズムについての印象として、多くの日本の都市において外国人を含む多様な人々を受け入れることを阻む障害や恐怖感があることを指摘した。しかしその一方でウッド氏は、日本では多様性から生じる対立をうまく処理し、逆に多様な交流の優位性を生み出す能力をもつ都市の行政担当者や地域のリーダーたちが多くいるようであると述べ、外国人を含むすべての住民の子供たちに公的な教育を保証する宣言を行った浜松市の例を取り上げた。

講演でも質疑応答でもウッド氏が示したインターカルチャリズムに対する常にポジティブで楽観的な見方は、非常に印象的で説得力のあるものであった。それはグローバル化した世界における都市生活の将来についての希望を参加者に与えたといえよう。
(英語版):
http://japanquebec.blog76.fc2.com/blog-entry-79.html

参考:
フィル・ウッド氏のホームページ:
http://philwood.eu/
フィル・ウッド氏の著書「インターカルチュラル・シティ」:
http://philwood.eu/#/books-for-sale/4538051660

(文責:宮尾尊弘)

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