2012年度大会を終えて:立花英裕AJEQ副会長 [報告]

日本ケベック学会2012年度大会を終えて

立花英裕(AJEQ副会長)

 去る10月6日(土)、早稲田大学の早稲田キャンパス8号館で、日本ケベック学会年次大会が開催された。最近は、学会活動といえども大学の施設を自由に使える余地が限られており、早稲田大学を大会会場としてお引き受けすることに一抹の不安がないわけではなかった。しかし、なんとか程よい広さの、設備の比較的整った会議室が確保できた。会場の内装や雰囲気は、発表や討議にも微妙な影響を与えるものである。万が一の落ち度がないように蓋を開けるまで冷や冷やしていたが、なんとかほぼ順調に大会が進行したようなので、安堵の胸を撫で下ろした次第である。
 今回の大会は、2009年から数えて4回目にあたる。2009年大会はガブリエル・ロワとライシテという二つのテーマを掲げていた。2010年大会は、Lise Gauvin 教授の講演を一種の基調講演としてケベック文学を移動と定住の観点から検討した。2011年大会は、UNIFAとの共同開催となり、Micheline Milot教授と作家Dany Laferrière氏を招聘することができ、幾分派手な大会になったことが思い出される。そして今回の2012年大会だが、昨年ほどの出席者数には達しなかったものの、予想を越えた人たちが集まり、熱意と緊張感に溢れた大会になったことは喜ばしい。NHKラジオ国際放送(フランス語)からの取材も受けたことを、ご報告しておく。
 昼食時の雑談になるが、州政府事務所の天野さんの報告によると、Charron代表がプログラムを見て、今回初めてテーマをもった大会になったと感想をおっしゃったそうである。これまでの大会にもテーマがなかったわけではないが、たしかに今回はテーマ性をより強く打ち出すように心がけていたのである。それがCharron代表にも伝わったということは、準備する側の自己満足に終わらなかったことの証なのかもしれない。ドゥニーズ・ダウ名誉教授の基調講演とシンポジウムによって構成された「フランス語憲章35周年」をめぐる発表と討議は、各発表者の発言がかみ合い、補完し合い、密度の濃いものであった。とりわけ、基調講演の司会・通訳を担当し、かつシンポジウムでも充実した発表をされた矢頭典枝理事の活躍は目覚ましかったというのが、ひいき目かもしれないが、筆者の偽らざる感想である。シンポジウムに限らず各発表者の話を聴いていると、ケベックだけに限定されない視野がどこかに感じとられ、それが発表に緊張感を与えているように思えた。ケベック研究の存在理由を公に認めさせるにはどうしたらよいのかを、各自が密かに問うているからではないだろうか。
 大会に変化をつけるために「ケベックのコンテンポラリー・ダンス」について岡見さえ会員に講演していただいたが、映像をふんだんに見せていただいただけでなく、学会にふさわしい学術的な分析も聴かせていただき、ケベックを越えて、現代のダンスについて理解を深めてくれる内容になっていた。
 韓国ケベック学会ACEQから大会に参加してくださったHan Yongtaek氏やLee Sinja氏の発表も刺激的で、日韓両学会の交流のもつ意義をあらためて認識させるものであった。
 大会の発言者全員に触れることはできないが、閉会式では竹中豊副会長が「この学会には勢いがある」とおっしゃっていた。この「勢い」をこれからも持続したいものである。
以上
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