「現代のケベック」講座:沼田貞昭元駐加日本大使(12/13@明治大学) [報告]

「現代のケベック」講座(12/13):沼田貞昭元駐加日本大使・鹿島建設顧問 (12/13)

講師:沼田貞昭元駐加日本大使・鹿島建設顧問
題目:「外交官の目から見たカナダとケベック」
日時:2011年12月13日(火)13:00-14:30
場所:明治大学リバティタワー1143教室
コーディネーター:小畑精和(AJEQ会長、明治大学教授)

コーディネーターの小畑教授と講演者の沼田大使、駐加大使としての経験談を交えた講演
111213Qa.jpg111213Qb.jpg
カナダでのフランス語の先生より伝授されたケベックの曲を弾き語りで披露する沼田大使
111213Qc.jpg111213Qd.jpg
小畑教授と池内講師によるカナダ・ケベックと仏・英・米との比較や関係についての質問
111213Qe.jpg111213Qf.jpg
(報告)
 まず、沼田大使はカナダとケベックの特徴を概観した後、カナダが政府の効率性、経済発展、環境面などで国際的に非常に評判が高い国であることを強調。その上で、カナダのアイデンティティが、「サバイバル」つまり「生き残り」であることを指摘。それは美しいが冬は厳しい自然を生き延びてより強くなる「頑張り」を意味しているとの解釈を示した。
 またケベックについては、カナダが様々な国からの移民で成り立つ「サラダボウル」ないし「モザイク」の社会と言われるのに対して、ケベックは「マルチ・カルチャリズム」をさらに発展させ、多様な文化を融合した「インター・カルチャリズム」を達成したことが特徴で、それは香港系やハイチ系のケベック人が総督になるという人事により象徴されているとのこと。
 さらに、政治面での連邦とケベック州との関係、およびケベックの国際・外交関係について詳しい説明があり、また文化面でのケベックの感受性の強さについて、日本の伝統文化である華道や茶道についてカナダ人の中でもケベック人が特に興味を示す傾向があることも指摘された。
 その上で、沼田大使は駐加日本大使の時代に、吟遊詩人のシンガーソングライターだったフランス語の先生から習ったというケベックの歌「小さな幸せ君」を、ギターの弾き語りで披露。参加学生の拍手喝采を浴びた。
 質疑応答では、カナダ・ケベックとフランスとの比較、英語圏との違い、またカナダが英国から独立していないように見えることなどの疑問が出され、興味深い討論となった。
 駐加日本大使として、カナダやケベックの人々や文化や自然と接した体験談に基づいた沼田大使の興味深い講演と弾き語りのパフォーマンスに参加者たちはすっかり魅了されたようであった。
(文責:宮尾尊弘)

「現代のケベック」講座:クロード=イヴ・シャロン代表(12/6@明治大学) [報告]

「現代のケベック」講座(12/6):クロード=イヴ・シャロン・ケベック州政府在日事務所代表 (12/6)

講師:クロード=イヴ・シャロン・ケベック州政府在日事務所代表
題目:「Le Plan Nord: ケベック北部開発について」
日時:2011年12月6日(火)13:00-14:30
場所:明治大学リバティタワー1143教室
コーディネーター・通訳:小畑精和(AJEQ会長、明治大学教授)

コーディネーターの小畑教授と講演者のシャロン代表、フランス語で講演するシャロン代表
111206AJEQ0.jpg111206AJEQ1.jpg
活発な質疑応答、池内講師による質問とコメント、および学生による質問
111206AJEQ2.jpg111206AJEQ3.jpg
(報告)
 まず、シャロン氏はケベック北部の景色や自然、またそこに住む先住民族(ファースト・ネーション)の生活などをスライドの写真を使って詳しく説明し、現代的な課題として、レアアースのような貴重な資源の存在と先住民族の間での生活上の問題点を指摘した。
 その上で、これから25年という長期にわたって行われるケベック北部開発(Plan Nord)のプロジェクトについて詳しく解説し、それがエネルギーや資源の開発を目指すとともに、先住民族の生活向上と環境の保護を同時に達成するような投資を行い、ケベック州内の南北問題を解消することが目的であると主張。さらにこのプロジェクトを推進するための国際協力にも言及し、日本もレアアース獲得のために積極的な協力と投資を行うという見通しを示した。
 講義の後に活発な質疑応答が行われ、その中で池内光久多摩大学大学院特別特別講師が、この北部開発プロジェクトは、ケベックにとっての「第二の静かな革命」になる可能性があるのではないかという指摘があった。それに対して、シャロン氏は、このプロジェクトの主要な柱としてケベック北部の開発とともに教育という側面があるので、文字通り「第二の静かな革命」になり得るという見解を示した。
 学生たちからも色々な質問が出て、シャロン代表と活発なやりとりが行われ、ケベックの理解が大いに深まった講義であった。
(文責:宮尾尊弘)

「現代のケベック」講座:池内光久講師(11/29@明治大学) [報告]

「現代のケベック」講座(11/29):池内光久多摩大学大学院特別講師(12/6)

講師:池内光久多摩大学大学院特別特別講師
題目:「ケベックの産業経済」
日時:2011年11月29日(火)13:00-14:30
場所:明治大学リバティタワー1143教室
コーディネーター:小畑精和(AJEQ会長、明治大学教授)

コーディネーターの小畑教授と講演者の池内講師、ケベックの首相の名前を紹介する池内講師
111129Ikeuchi0.jpg111129Ikeuchi1.jpg
(報告)
 まず、池内氏はケベックの現代史も含めた州の概要について説明し、特にケベック州の経済に関する様々な特徴や指標を提示した上で、大企業の代表として電力会社のハイドロ・ケベックや航空機や車両の生産で有名なボンバルディアなどを取り上げた。
 また、ケベックの主要先端産業として情報、健康関連、医薬品などの分野に言及するとともに、ケベック州南部のいくつかの都市がこのところ産業を発展させ輸出を増加させているという「サクセス・ストーリー」を紹介した。
 さらに、ケベックと日本との経済関係について説明した後に、まとめとしてケベックの強みと弱み、好機と脅威についての分析を示した。強みとしては、フランコフォン文化、豊富な資源、貿易の伸展などがあり、弱みとしては、人口減少や地域格差などがあることが指摘された。
 1時間少々という短い間に、ケベックの歴史、地理、人口、経済、産業、開発などを網羅して説明した上に、州の強みと弱みを対比させ、さらに今後の展望まで示した池内氏の講演は流石であり、ケベックを学ぶ者にとって実に有益な内容であった。
(文責:宮尾尊弘)
--------------------------------------------------------------------------------------------------------------

「現代のケベック」講座:小松祐子筑波大学准教授(11/8@明治大学) [報告]

現代のケベック」講座(11/8):小松祐子筑波大学准教授(12/5)

講師:小松祐子筑波大学准教授
題目:「ケベックのフランス語」
日時:2011年11月8日(火)13:00-14:30
場所:明治大学リバティタワー1143教室
コーディネーター:小畑精和(AJEQ会長、明治大学教授)
報告
 去る11月8日(火)明治大学における一般公開講座において、AJEQ理事・小松祐子筑波大学准教授による掲題の講義があった。コーディネーターの小畑教授の解説とともに、たいへん興味深く内容の濃い講義であったので、その一端を報告する。
 冒頭セリーヌ・ディオンの「語り」が動画で写されて彼女のケベック・フランス語(以下ケベコワ)の特徴がダイナミックに示され、次いでフランス人によるケベックの開拓史が説かれ、フランスでは「ジュワル」として蔑視されたケベコワも先人の努力が結実して、連邦「公用語法(1969)」や「ケベック・フランス語憲章(1977)」の成立をみることとなった史実が示された。
 次いで、発音や綴りや会話の言い回しなどのケベコワ特有の幾つかの特徴が示されたが、ケベックに居なければ判らないような用語(poudrerie[f] 雪煙、motoneige[f] スノーモビル、dépanneur[m] コンビニ)が紹介された。
 次にケベック特有の現象の一つにカトリック用語から転用された軽蔑語が散見されることが言及された。例えばcalice[m](聖杯)、tabernacle[m](聖櫃)などが、相手を貶す言葉として使用されるという説明に受講生は驚いた。最後に、社会への女性の進出に伴い職業名・職階名をフランスに先駆けて改良していること(例:Madame le président (仏)→Madame la présidente (ケベック))、またITの分野でケベックがフランスをリードしていること(例、メール→courrier[m]、ソフトウエア→logiciel[m]、クリックする→cliquer)などの解説がなされ、ケベック文化の正統性と先進性が浮き彫りにされるという、他では滅多に聴けない講話に、会場は知的興奮に包まれたのであった。
(文責 池内光久)

ジャン=ルイ・ロワ氏講演会(12/2 @明治大学和泉校舎) [報告]

Jean-Louis Roy氏講演会(12/2 @明治大学)小畑精和会長の報告(12/4)

明治大学大学院特別講義ジャン=ルイ・ロワ氏の講演。
講師:Jean-Louis Roy
    (フランコフォニー国際機関第二代目事務総長・元ケベック州政府在仏事務所代表)
題目:「グローバル化世界におけるフランコフォニーの挑戦」(フランス語・通訳あり)
日時:2011年12月2日(金)16:20-17:50
場所:明治大学和泉校舎リエゾン棟L1教室
司会:瀬藤澄彦(AJEQ会員、帝京大学教授)
コーディネーター:小畑精和(AJEQ会長、明治大学教授)

 12月2日(金)に明治大学和泉校舎で、元フランコフォニー国際機関(OIF)事務総長のJean-Louis Roy氏の講演会が開かれた。
 この講演会は瀬藤澄彦AJEQ会員(帝京大学経済学部教授、元JETROモントリオール事務所長)の尽力によって実現したもので、同会員が司会と解説役を務めた。AJEQからは小松祐子理事、鳥羽美鈴会員、仲村愛会員と小畑が参加した。
 グローバリゼーションの中でフランコフォニー国際機関が果たす役割と今後の世界の展望について興味深い講演であった。30名ほどの学生を交え、講演後活発な質疑応答が交わされ、有意義な会であった。
(文責 小畑精和)

写真は、Jean-Louis Roy氏(左)と瀬藤澄彦氏(右)
2011.12.2.J.L.ROY 013.jpg
(写真は小畑会長提供)
-----------------------------------------------------------------------------------

AJEQ勉強会(11/26 @早稲田大学)報告 [報告]

AJEQ勉強会(11/26 @早稲田大学):小倉和子理事の報告 (11/29)

2011年11月26日(土)早稲田大学にて、ガブリエル・ロワのBonheur d’occasion(束の間の幸福)の映画(1983年、クロード・フルニエ監督)を見ながら、勉強会を開催しました。

1945年にモントリオールとパリで刊行された原作は、ケベック文学が初めて都市を描いたといわれている小説です。第2次世界大戦が迫り来る中、世界恐慌のあおりで労働者の失業が深刻化するモントリオールのサン=アンリ地区を舞台にして、女性主人公フロランティーヌを取り巻く人々を写実的に描いた作品は、いちはやく英訳が出ただけでなく、フランスでフェミナ賞も受賞したことから、たいへん話題を呼びました。

勉強会では、まず司会の小倉和子(立教大学)が小説と映画の概要を紹介した後、山出裕子(明治大学)が小説の舞台となっているサン=アンリ地区の昔と今について解説し、さらに佐々木菜緒(明治大学大学院)が、病院が象徴する空間について、母ロザンナの視点から分析しました。

山出からは、当時工場が建ち並んでいた労働者街は、今では市の再開発によって瀟洒な界隈に変貌しているとの報告がありました。また、佐々木からは、末っ子のダニエルが入院することになる、モンロワイヤルの中腹に建つ英系の慈善小児病院とロザンナが様々なかたちで対比されていることが指摘されました。

参加者(12名)とは活発な質疑応答もあり、肩が凝らないながら、有意義な勉強会だったと思います。今後もこのような活動を通してケベック研究を盛り上げていきたいと考えています。

文責=小倉
-----------------------------------------------------------------------------------------------------------------

UNIFA・AJEQ2011年全国大会@日仏会館 [報告]

UNIFA・AJEQ2011年全国大会@日仏会館

UNIFA: 2011.9.29-10.1: AJEQ全国大会:2011年10月1日(土)9:30-18:00
Maison Franco-Japonaise: 場所:日仏会館(東京・恵比寿):
111001Ua10.jpg111001Ub10.jpg
第1セッション:ライシテとグローバル化(9:30-11:15):(左)司会・三浦信孝(中央大学)
(右)講演・ミシュリーヌ・ミロ(ケベック大学モントリオール校)「ライシテと宗教的マイノリティ:政教分離から承認の原理へ」
111001Uc10.jpg111001Ud10.jpg
(左)伊達聖伸(上智大学)「和辻哲郎に見る宗教への文化的アプローチと『ライシテ』」:(右)辛玉根(高麗大学・ソウル)「韓国における多文化主義とライシテ」
111001Ue10.jpg111001Uf10.jpg
111001Ug.jpg111001Uh.jpg
第2セッション:ケベックにおける移民文学(11:30-13:00):司会・小倉和子(立教大学)
111001Ui.jpg111001Uj.jpg
(左)リ・ジソン(成均館大学校・ソウル)「狭間の文学:レジーヌ・ロバン」: (右)廣松勲(モントリオール大学)「根付きの謎:エミール・オリヴィエの『ラ・ブリュルリー』を中心に」
111001Uk.jpg111001Ul.jpg
山出裕子(明治大学)「ベトナム系ケベック作家キム・チュイの作品におけるエスニック・アイデンティティと記憶の役割」
111001Um.jpg111001Un.jpg
質疑応答で盛り上がる会場内およびAJEQ受付で仕事に励むメンバー
111001Uo.jpg111001Up.jpg
-------------------------------------------------------------------------------
AJEQ2011年総会(13:30-14:10)@601号室:
111001Uqa7.jpg 111001Uqb6.jpg 111001Uqd.jpg
111001Uqc7.jpg 111001Uqe.jpg 111001Uqf.jpg
-------------------------------------------------------------------------------
第3セッション:アイデンティティと言葉(14:30-17:30):司会・立花英裕(早稲田大学)
111001Ur.jpg111001Us.jpg
講演・ダニー・ラフェリエール「アイデンティティと言葉」:会場内での質疑応答と会場外での交流
111001Ut.jpg111001Uu.jpg
111001Uv.jpg111001Uw.jpg
パネルディスカッション:(左)立花英裕(早稲田大学)「ダニー・ラフェリエールとアイデンティティの戯れ:小説『我輩は日本作家である』をめぐって」:(右)リ・カヤ(成均館大学校・ソウル)「マリーズ・コンデに見るアイデンティティの探求」
111001Ux.jpg111001Uy.jpg
(左)董強(北京大学)「アイデンティティと翻訳:ミラン・クンデラ作品をめぐる考察」:(右)ピエール・マルチネズ(国立ソウル大学)「他者の眼差しを介したアイデンティティの構築・韓国へのフランス人旅行者が語る韓国と日本」
111001Uz.jpg111001Uzz.jpg
------------------------------------------------------------------------------
AJEQ研究発表(日本語)(17:00-18:00)@601号室:司会・竹中豊(カリタス女子短期大学)
(1)仲村愛(明治大学大学院)「多文化社会における正義ーカナダ連邦政府の多文化主義とケベック州のインターカルチュラリズムの対立を事例としてー」
111001U1.jpg111001U2.jpg
(2)山口いずみ(津田塾大学)「多元的アイデンティティに関する一考察ー中国系モントリオール市民を事例にー」
111001U3.jpg111001U4.jpg
AJEQメンバーによる活発な質疑応答:
111001U5.jpg111001U6.jpg
111001U7.jpg111001U8.jpg

ロベール・ルパージュ演出「エオンナガタ」について(紹介:安田敬) [お知らせ]

ロベール・ルパージュ演出「エオンナガタ」について(09/06)

安田敬(AJEQ理事、Dance Cafe)による紹介

公演名「エオンナガタ」(EONNAGATA)
★すでにパリ、ロンドン上演、ダンス・演劇・アート話題のコラボレーション、ついに東京で実現!
演出はケベック出身、著名な演出家のロベール・ルパージュ。
そして出演は舞踊界から世界に誇るシルヴィ・ギエム、イギリスを代表する振付家ラッセル・マリファント、そしてロベール・ルパージュも舞台に上がる。

Sylvie Guillem ・Robert Lepage ・Russell Maliphant
「エオンナガタ-EONNAGATA」
日時:2011年11月17日~20日 料金:S15.000円~D5.000円
会場:ゆうぽうとホール(五反田)
協力:カナダアーツカウンシル ケベック州政府
主催:NBS (http://www.nbs.or.jp)
http://www.nbs.or.jp/stages/1111_eonnagata/index.html

概要:
 職業外交官、時に軍人、アマチュアのスパイでもあったシャルル・ド・ボーモン、別名シュヴァリエ・デオンは、名誉と敗北、栄光と追放のどちらをも良く知っていた。その数奇な人生以上に目を引くのが、彼の並々ならぬ大胆さである。エオンはおそらく、任務遂行のために女装した最初のスパイであろう。そのせいで様々な敵を作り、エオンに常にドレスを着用するよう強要したルイ16世もその一人だった。人々は次第に、彼が男なのか女なのか分からなくなっていった。
 もしもシャルル・ド・ボーモンが男であり、そして女でもあったら? 演劇とダンスのはざまで、「エオンナガタ」は剣に対して扇を突きつけ、剣士と遊女がせめぎあう。同時に本作は、セクシュアリティーというよりもジェンダーの探求をする中で、ある性が、もう一方の性によって表現される可能性を模索している。この作品は、歌舞伎の技法である女形(オンナガタ)を参考にしており、出演者が高度に様式化された表現で女性を演じる。これによってシュヴァリエ・デオンに新たな光を当て、彼の謎は、人間のアイデンティティーそのものの神秘なのではないか、という点を明らかにしている。
 シャルル・ド・ボーモンの毅然とした態度は、ただちに「エオンナガタ」の制作者たちの共感を呼んだ。シルヴィ・ギエムは古典バレエ界の名高い反逆者で、コンテンポラリー・ダンスに転向したダンサーだ。近年、彼女はロンドン、東京、シドニーやパリで「Push」や「聖なる怪物たち」といった公演を行い、その気品、エネルギー、精緻さ、ユーモアで観客を魅了してきた。ロベール・ルパージュは過去20年間にわたり演劇表現の枠を広げ、ジャンルを横断し、未知の領域に分け入り、大勢の多様で熱狂的なファンを集めてきた。ラッセル・マリファントはしばしば、彼の世代の最も重要なイギリスの振付家と評される。彼は武道、古典ダンス、そして最新の照明技術を作品に織り込み、その作品には流動性とパワーが息づいている。
 照明デザイナーのマイケル・ハル、衣装デザイナーのアレキサンダー・マックイーン、そしてサウンドデザイナーのャン=セバスティアン・コテらの協力を得て、ギエム、ルパージュ、マリファントは、夢から晩年へ、そしてその逆へと交差する、奇妙で独創的なクロスオーバーを創り上げた。(公演資料抜粋より)
以前からこの人物に興味を持っていたカナダ出世の演出家ロベール・ルパージュが、ルパージュにとって唯一の誤算は「僕自身もシルヴィやラッセル(マリファント)と共に踊らなければならなかったこと(笑)。まさか50歳にもなって自分が踊る破目になるなんて想像もしていなかったが、今ではより表現の幅が広がったとシルヴィには感謝してるよ」。

●ロベール・ルパージュ略歴(演出家・舞台美術家・劇作家・俳優・映画監督)
1957年、ケベック生まれ。1984年、戯曲『循環(Circulation)』でケベック国際演劇週間・最優秀賞を受賞。翌年『ドラゴン三部作』。以後、精力的に作品を発表。1989~93年、オタワ国立芸術センター・フランス演劇芸術監督。1994年、多分野制作集団エクス・マキナ・プロジェクトを設立。また94年、映画『告解』の脚本・製作、翌年のカンヌ映画祭監督週間で発表。2003年には『月の向こう側』を映画化。1997年、彼の推進力によって、ケベックに多領域研究制作センターの「カゼルヌ(兵営)」が誕生。『奇蹟の幾何学』(1998)、『月の向こう側』(2000)、『1984年』(2005)、『アンデルセン・プロジェクト』(2005)、『リプシンチ(Lipsynch)』(2007)、など、数々の作品を発表。オペラ演出も多数。またシルク・デュ・ソレイユの構想と演出を担当し、ラスベガスで『カー』を上演。コレまでの来日では、『ヒロシマ~太田川七つの流れ』をはじめ『ポリグラフ』『テンペスト』『針とオピウム』『月の向こう側』『アンデルセン・プロジェクト』などを上演している。
●お問い合わせ :公益財団法人日本舞台芸術振興会

110906AJEQY.jpg

ジャン・シャレ・ケベック首相の講演:於東京 [報告]

ジャン・シャレ・ケベック首相の講演:於東京(08/25)
Premier ministre du Québec, Monsieur Jean Charest

テーマ:「Plan Nord: ケベック北部開発計画プロジェクト」
日時:2011年8月25日12時~14時
会場:ホテルニューオータニ(東京)

北部開発 110824a13.jpg

クロード-イヴ・シャロン・ケベック州政府在日事務所代表による紹介
シャロン氏 110824b13.jpg

ジャン・シャレ・ケベック州首相によるランチョンスピーチ
110824c16.jpg

冒頭でクロード-イヴ・シャロン氏によって、3月11日の大震災以降初めて訪日したカナダの政治家であると紹介されたジャン・シャレ・ケベック首相は、まずカナダ一般、特にケベック州の最近の経済的なパフォーマンスに言及し、競争力のある新産業および様々な資源をもとに経済が強くなっていることを強調した。
それとの関連で、首相は世代プロジェクトと呼ばれるケベック北部開発プロジェクトの概要を説明した。この25年以上にわたるプロジェクトは、資源資源が豊富なケベック北部における維持可能な開発のために合計で800億ドルに及ぶ投資が行われるという。
首相は、日本との新しい関係の構築によって、お互いの経済的な繁栄および双方向の貿易と投資の促進が期待できると結論付けた。
(宮尾)
参考
フランス語:http://plannord.gouv.qc.ca/
英語:http://plannord.gouv.qc.ca/english/

新刊書『多文化社会ケベックの挑戦』の紹介 [資料紹介]

新刊書『多文化社会ケベックの挑戦』の紹介(08/19)

竹中 豊(カリタス女子短期大学)

『多文化社会ケベックの挑戦 ―文化的差異に関する調和の実践 ブシャール=テイラー報告―』(ジェラール・ブシャール、チャールズ・テイラー編/ 竹中豊、飯笹佐代子、矢頭典枝訳/159頁/ 明石書店、2011年8月20日発行、定価(本体2,200円+税)

 本書は、おそらく現代ケベック社会を理解するうえで最も重要なテキストであろう。原題はFONDER L’AVENIR: le temps de la conciliation (2008年5月刊)。これは、ケベック州政府の委託をうけた委員会が編纂したもので、委員長はケベックの知性を代表するフランス 語系のG.ブシャール氏と英語系のC.テイラー氏の両名。そのためしばしば『ブシャール=テイラー報告』と称される。原典は両段組で310頁におよぶ”大著”だが、ここに訳出されたのはその要約版である。とはいえ、内容理解に支障はない。

 本書の特徴のひとつは、アイデンティティの再構築にむけて、今、ケベックが必至に模索している姿を映し出している点にあるだろう。マジョリティであるフランス系ケベックの歴史・文化・価値・言語などを基盤としつつ、しかし現代の文化的・民族的多様性を肯定的に評価し、同時にケベック社会に到来しつつある文化価値的異質性とどのように折り合い・調整をつけるか。それらを幅広く検証し、調和をはかる試みが、実践的に語られる。本書が《accommodements raisonnables》とも言われるゆえんである。

 今一つは、開かれた自由なケベック社会の姿を、多文化的自由主義の視点から描いている点にあろう。ケベックは独自のフランス語文化圏を維持しつつも、しかし世界から孤立すべきでなく、同時に異なる価値を受け入れる多文化共生社会こそが、ケベックの生き方だと分析される。すなわち、良質の民主主義、積極的な移民政策、連邦政府の多文化主義政策と異なるインターカルチュラリズム、開かれたライシテ等々、社会学的にも興味をひくテーマがいくつも論じられる。 

 邦訳版では、ブシャール=テイラー両氏による日本語版へのメッセ-ジに加え、一般読者むけに竹中による”解説”、そして巻末には原典にはないケベックに関するデータも記載されている。なお、本書は学術研究書ではなく、基本的にはケベック社会の現状を分析した政策提言である点を記しておく。訳者はいずれもAJEQ会員である。

Takenaka60.jpg

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。