特集「ケベック州議会選挙解説と雑感」意見5 [特集]

特集「ケベック州議会選挙解説と雑感」意見5

9月27日掲載:

5. 仲村 愛(明治大学大学院、モントリオール大学):

ケベック党は本当に「少数派」与党なのか

 2012年9月4日、ケベック州議会の総選挙が行われた。結果はPQ(ケベック党)54議席、PLQ(自由党)50議席、CAQ(ケベックの未来連合)19議席、QS(連帯ケベック)2議席であり、分離・独立派のPQが少数派与党を形成し9年ぶりに政権に返り咲いた。また、ケベック史上初の女性首相が誕生した。敗したもののかなりの議席を獲得したPLQは、党首を務める前首相ジャン・シャレ氏が自身の選挙区で落選した。シャレ氏は数日後に政界からの引退を表明した。
 ポリーヌ・マロワ首相率いるPQが少数派与党である点を強調するメディアは多い。PQは過半数の63議席に届かず、最大野党となったPLQとはわずか4議席の差しかないからだ。「世界中で最も支持率の低い政権」といった表現さえ散見された。
 だが本当にPQの支持率は低いのだろうか?確かに、PQとPLQの獲得議席数を見れば、PQはいかにも辛勝という感じである。得票率でいえばわずか31.9%。州民の3割にしか支持されていない与党というわけである。
 だがちょっと待ってほしい。PQ以下各党の得票率を見てみたい。PLQ31.2%、CAQ27.1%、QS6%、その他3.9%となっている。この数字が表すのは、PQの獲得票の少なさよりも、むしろ2011年11月に誕生したCAQの躍進ぶりである。議席数ではPQとPLQに対してそれぞれ30議席もの差があるにもかかわらず、得票率でいえば、CAQは両政党に対して4%台の差しか許していないのだ。
 得票率が必ずしも議席数に反映されないのは、ケベック州の選挙制度が小選挙区制だからだ。全州125の選挙区からそれぞれ当選できるのは1人のみ。この選挙制度は、当選者の確定が容易だが死票が多いというデメリットがある。なぜなら、その選挙区内で相対的に獲得票数が一番多い候補者が当選できるからだ。接戦であればあるほど死票が増え、民意が反映されないことになる。
 選挙区ごとに結果をみれば、モントリオール都市圏では、かなりの選挙区でPLQが他に追随を許さない形で白星を飾っている。だが、それ以外の地域でPLQが当選した選挙区ではむしろ、PLQとCAQの接戦、或いはそれにPQを加えた三つ巴の戦いであったことが伺える。CAQ、惜しくも当選まであと一歩届かず―そんな選挙区が州全体のあちこちで見受けられるのだ。もし比例代表制だったならば、CAQの獲得議席数はもっと多かったに違いない。
 もともとCAQは元ケベック党員(ペキスト)のフランソワ・ルゴー氏が結成した政党。昨年PQを離党した多くの政治家はCAQへ移籍した。つまり、PQの「少数派与党」は、PQの支持票の多くがCAQへ流れた結果なのである。とすれば、「分離・独立派」の勢いはむしろ強まっているのではないか。CAQの今後の動きに注目だ。

(明治大学大学院教養デザイン研究科博士後期課程2年、モントリオール大学留学中)

特集「ケベック州議会選挙解説と雑感」意見4 [特集]

特集「ケベック州議会選挙解説と雑感」意見4

9月26日掲載:

4. 荒木隆人(京都大学大学院、ケベック大学モントリオール校):

ケベック州選挙についての雑感―ケベック党が直面する課題―

荒木隆人
京都大学大学院法学研究科博士後期課程
ケベック大学モントリオール校政治学研究科修士課程

 去る2012年9月4日に実施されたケベック州の州選挙では、ポーリーヌ・マロワ党首に率いられたケベック党が125議席中54議席獲得し、50議席獲得したケベック自由党を破って第一党となり、9年ぶりに政権復帰した。周知の通り、ケベック党は1968年にルネ・レヴェックによって結成されて以来、主権連合を根本綱領とする政党である。今回の選挙でケベック党が第一党になったのには、様々な要因が働いているだろうが、今年2月にラヴァル大学とケベック大学の学生組合を発端とし、労働組合や一般州民にまで拡大した大学の学費値上げ反対運動に対して、ケベック党が学費値上げ凍結を公約として打ち出すことで運動の取り込みを図ったことが大きな要因の一つであったと言える。従って、州民は何よりもまずこの学費問題の解決の行方を見守ることになるだろう。9月19日に発足したマロワ新政権は早くもこの問題への積極的な取り組みの姿勢を示した。まず、新政権はその閣僚人事において、若干20歳の学生運動のリーダーの一人レオ・ビュロー・ブリュアン(Leo Bureau-Blouin)を議会秘書官に任命し、次に、政権発足初日となる20日には、大学の学費値上げに関して、今年度(2012-2013年)は値上げを実施せず、その後の年度については今後開かれる予定の教育問題についての頂上会議での討論の結果に委ねることを約束した。
 ケベック党の根本綱領である主権連合構想の実現についてはどのように考えられるだろうか。少数与党政権である現在では、主権レファレンダムの実施はすぐには困難であろう。他の政党との主権獲得に関する協力の可能性についてはどうであろうか。今回の選挙で19議席を獲得し、第三党となったCAQ(ケベックの未来連合)は、ケベックの主権獲得よりも小さい政府を目指すという経済政策の方に強い関心をもつ政党である。むしろ、主権獲得についてケベック党と協力する可能性があるのは、第四党である中道左派で主権ケベックを主張するQS(ケベック連帯)の方であるが、獲得議席数が2議席ということを考えると、ケベック党の54議席と合わせても、州議会で過半数に届かない規模である。加えて、昨年8月に実施された世論調査(the Leger Marketing Poll)によれば、ケベックの主権獲得を望む州民は全体の24%にとどまるとされている。従って、ケベック党にとって、主権連合構想は根本綱領であるには変わりはないとしても、学費問題解決を含む今後の難しい政策運営を切り抜け、州民の支持を強固にすることが先決の課題となる。とはいえ、主権連合構想を将来的な目標とする政党の政権復帰が、今後のカナダ政治に大きな影響を与えるようになるだろうことは否定できないだろう。

(京都大学大学院法学研究科博士後期課程、ケベック大学モントリオール校政治学研究科修士課程)


特集「ケベック州議会選挙解説と雑感」意見3 [特集]

特集「ケベック州議会選挙解説と雑感」意見3

9月25日掲載

3. 小畑精和(明治大学)

州議会選挙結果とケベック社会の未来

 9月4日に行われたケベック州議会選挙では、これまでの「主権派」か「連邦派」かという対立軸に加えて、「市場原理」がどこまで優先されるのかも問われた。
 総議席数125のうち、主権連合派のケベック党(PQ)が54議席 (得票率は31.94%)を獲得して第一党になったが、少数与党である。政権与党だったケベック自由党(PLQ)は50議席(得票率31.21%)にとどまり、現首相のジャン・シャレ氏も落選した。昨年誕生した新政党の「ケベックの未来連合」Coalition Avenir Quebec(CAQ)は19議席(27.06%)。緑の党のケベック版「ケベック連帯」Québec solidaireが2議席(6.02%)。
 PLQは汚職まみれでいやだけど、ケベックの「独立」も不安だし、かといって、第三極のCAQもまだ未知数だし、、、といったとまどいもあろうが、この選挙結果は「新たな争点」に対するケベック州民のためらいの反映でもあろう。
 今回の選挙では、市場原理をどこまで優先させるのかも問題になっていた。ケベックでは今年学費値上げ反対の学生運動が広がり、ストやデモが大規模に展開されてきた。3月22日にはモンレアルで20万人のデモ参加者を数え、この数字はケベック史上最大と言われている。ことは単なる学費値上げ問題から、「市場原理至上主義」批判へと広がっていった。PLQ政府はデモやピケなどを規制する78号法(のちに12号法)を州議会で可決させて対抗した。これに対して多くの教員組合、PQは学生支持を表明していた。汚職疑惑だけでなく、若者の支持を失ったこともシャレ政権敗北の原因の一つだったのである。
 学費値上げに代表されるように、PLQはケベック社会をより市場原理に委ね、州政府の負担を軽くする方向に舵をとろうとしてきた。今回の選挙結果はその方向に州民が疑義を挟み、PQが一応勝った形になったが、第三党のCAQは「市場原理」優先でPLQに近く、「大きな政府」志向を州民が支持したともいえない。
 また、PQはPLQがフランス語を十分に擁護していないとして、フランス語憲章の適用強化を主張している。この点でもCAQはPLQに近い立場である。
 マロワ新首相は学費値上げの撤回、12号法の廃止を早々に宣言した。しかし、PQも過半数をえたわけではなく、連立を組むCAQは学費値上げ賛成であり、新政府の前途は多難である。確かに、学生や労働組合はPQの勝利を歓迎しているし、党首のポーリーヌ・マロワはケベック史上初の女性首相になる。しかし、勝利の高揚はなく、Le Devoir紙の世論調査によると、有権者の48%が今回の選挙結果を不満に思っている。学生団体もPQが学費値上げ撤回を実施できるのか注視している。
 また、勝利直後のマロワ党首が演説中にPQの集会が暴漢に襲われ、一人が射殺され、一人が負傷した。犯人は多くの銃器を所有していたという。そのため、銃規制強化も浮上してきており、規制を弱めようとする連邦政府と対立する問題が一つ増えることになる。
 今後ケベック社会はどういう方向に進んでいくのだろうか。10月6日の大会でDenise Daoust UQAM名誉教授が「フランス語憲章」について講演してくださる。また、12月には、Gérard Bouchard UQAC教授が来日する。両教授が今回の選挙結果をどのようにとらえ、ケベックの未来をどのように考えているのか、今から講演を聞くのが楽しみである。
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特集「ケベック州議会選挙解説と雑感」意見2 [特集]

特集「ケベック州議会選挙解説と雑感」意見2

9月24日掲載

2. 陶山宣明(帝京平成大学)

ケベック党とスコットランド国民党

 9月4日に行なわれた州選挙で、ケベック党(PQ)は9年ぶりに政権に復帰し、ケベック史上初の女性宰相が誕生した。過去の二回の政権奪取時(1976年、1994年)には6割を超える議席を確保して安定した滑り出しだったが、少数党政府に過ぎないマロワ政権は心もとない船出を余儀なくされている。ケベック自由党とケベック未来連合が協力すればいつでも不信任案は成立し得、新政権は倒れる状態にあるため、早い段階で結果を出して、州民の支持を着実に高めて行く必要がある。まず、野党にも受け入れられる範囲で、且つ、右寄りの前政権とは差異が認められる形で、経済、社会政策面の実績を上げることが問われる。レファレンダムを行なうことを選挙時に公約した後で実践したレベックやパリゾーとは全く違う立場にある新首相は、そもそもの党是であるケベックの主権を直ちに州民に問おうとすれば必然的に議会解散が待っている。
 よく似た性格を持ち合わせたスコットランド国民党(SNP)と比較してみたい。連合王国から脱退してスコットランドに主権を回復する目標を掲げて結党されてから既に78年も経ち、1960年代の静かな革命で起こった大きな社会的な変化の末に生まれたケベック党よりも長い歴史を誇っている。ところが、SNPがPQの経験から学んでいること大なのは、前者が政治勢力として急速に力をつけて来たのはほんのこの十年余に限られるからである。1707年の合同法以降スコットランド人にとってもウェストミンスターこそが議会で、単純小選挙区制で二大政党制が確立している英国で小政党は苦戦を強いられ、SNPは通常選挙では1970年にやっと議席を取ることができた。1974年に最高11議席まで増やせたが、スコットランドの選挙区中の15.5%を占めただけであり、議会全体だとたったの1.7%でしかなかった。ブレア労働党政権下で復活したスコットランド議会で、最初の選挙でいきなり第一野党に躍り出て、2007年では早くも政権の座に就き、党首サモンドは自治政府首相に就任した。2011年には小選挙区比例代表併用制ではなかなか難しい過半数議席をゲットしたSNPは、選挙公約通りにスコットランド独立の是非を問う住民投票を実行する見込みである。
 ケベックより一足先に、スコットランドで投票がありそうだが、予断を許さない。スコットランド(人口5百万人)よりも小さな国が欧州には数多く存在し、その背景に超国家組織EUの発展がある。スコットランド人が国家内の民族として生き続ける道を選ぶか、それとも、自分たちの民族国家を持って大きなフレームの中に活路を見出そうとするのか、2014年秋に結論が出る。
 ケベックで三度目の州民投票が挙行される可能性は、PQが勝利の暁に実施する公約をした上で安定過半数議席を得られた時に生まれる。そのためには、庶民の生活を楽にしてあげて社会民主主義政党の性格を維持しながら、中道から右寄りのナショナリスト票をも取り込んで行って、マロワ首相が議会を解散する運びとなる。その際に、大西洋を横切った地域での運動の成否は、ケベックの成り行きに全く無関係ではあり得ない。

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特集「ケベック州議会選挙解説と雑感」意見1 [特集]

特集「ケベック州議会選挙解説と雑感」意見1

9月14日掲載

1. François Hébert

L'élection, le 4 septembre 2012, marque le retour au pouvoir du Parti québécois, indépendantiste et de centre gauche, après neuf années dans l'opposition et au terme d'un printemps agité, qualifié par les poètes des médias de printemps érable par allusion paronomastique au printemps arabe, qui a vu les étudiants descendre dans les rues et manifester avec banderolles et casseroles durant plus de cent jours. Les électeurs ont conféré au Parti québécois un mandat minoritaire cependant, ce qui fait que les élus auront fort à faire pour réaliser leur programme, notamment la marche vers la souveraineté. Après les chefs indépendantistes René Lévesque, Pierre-Marc Johnson, Jacques Parizeau, Lucien Bouchard, Bernard Landry et André Boisclair, voilà qu'une femme, c'est une première, dirigera les destinées de la province. Pauline Marois a une longue expérience des ministères et ne s'en laissera pas imposer par les deux principaux partis d'opposition, le Parti libéral dont le chef, Jean Charest, a été défait dans son propre comté, et la Coalition Avenir Québec, dirigée par un ancien ténor de l'indépendance, François Legault. Un second parti indépendantiste, Québec solidaire, a réussi à faire élire deux députés et reçu assez de suffrages dans nombre de comtés pour priver le Parti québécois de la majorité absolue. Le soir de la victoire de Pauline Marois, un attentat contre elle et les sympathisants qui s'étaient réunis à Montréal, a coûté la vie à un technicien et en a blessé un autre. Un caméraman de Radio-Canada a pu filmer le tout. Un cinquantenaire assez corpulent, cagoulé et vêtu d'une sorte de peignoir, s'est avancé et a tiré sur les hommes qui se trouvaient devant la porte de la salle, puis il a tenté de mettre le feu au bâtiment, mais il a été maîtrisé par la police en moins de deux minutes. Il s'appelle Richard Bain et il a crié avec son accent anglais, au moment où on l'appréhendait : «Les Anglais se réveillent! Les Anglais se réveillent!» Si sa mitraillette ne s'était pas enrayée et qu'il avait pu franchir la porte de la salle, on ose à peine imaginer le massacre. Les débats vont bon train : s'agissait-il d'un illuminé ou d'un terroriste, et à qui la faute si un tel acte a pu être commis? Certains blâment les hommes politiques et les médias, dont les discours enflammés ou les analyses partisanes durant la campagne électorale ont pu exacerber l'antagonisme entre francophones et anglophones, en diabolisant les tenants de l'indépendance du Québec et leur désir d'un troisième référendum. D'autres opinent : ce n'était qu'un fou. Quoi qu'il en soit du réalisme ou du surréalisme de son geste et de ses motivations, il possédait bel et bien une vingtaine d'armes à feu, et il en avait cinq avec lui le soir de l'attentat. Cela relance la question de la loi relative au contrôle des armes à feu, que le gouvernement fédéral veut abroger. Une énième confrontation entre le Canada et le Québec est à prévoir.

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公開セミナー「ケベック文学の現在」@立教大学 [写真]

公開セミナー「ケベック文学の現在」@立教大学

1.ナタリー・ワテーヌ教授「アンヌ・エベールと女性のエクリチュール」
2.フランソワ・エベール名誉教授「到着の謎ー1980年以降のケベックの移民作家」
日時:2012年4月28日(土)16:30~18:20
場所:立教大学・池袋キャンパス・太刀川記念館3階・多目的ホール
主催:立教大学異文化コミュニケーション学部
共催:日本ケベック学会

小倉和子AJEQ副会長の紹介とナタリー・ワテーヌ・シェルブルック大学教授の講演
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小畑精和AJEQ会長の質問に答えるナタリー・ワテーヌ教授
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さらなる質疑応答で深まる議論
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セミナー後半のフランソワ・エべール・モントリオール大学名誉教授による講演
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立花英裕AJEQ副会長やその他の参加者による質問で盛り上がるセミナー
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報告:教育功労賞叙勲式@在日フランス大使館 [報告]

報告:教育功労賞叙勲式@在日フランス大使館(3/17)

Palmes académiques 教育功労賞叙勲式

財団法人日本私学教育研究所
専任研究員 山崎吉朗

 2012年2月24日に在日フランス大使館で叙勲式があり,Palmes académiques 教育功労賞を頂き,chevalierに叙せられました.Palmes académiquesは1808年にナポレオン皇帝によって創設された勲章です.最初はフランス教育省の功労者のみが対象でしたが,後にその枠が広がり,フランス以外の国も含め,フランス学術研究やフランス語教育に貢献した人たちに対する勲章となりました.在日フランス大使館文化部が推薦し,本国の教育省で審査,決定します.現在,日本では約110名の受勲者がいます.
 今回の叙勳式は公益財団法人フランス語教育振興協会の長谷川善一理事長と私の2名に対してで,まず同理事長,そして私の順番でした.Bertrand Fort参事官が功績について述べて叙勲があり,受勲者が返礼の挨拶をするという形です.
 同参事官からは中等教育に長く身を置いたことを高く評価して頂き,私が教鞭をとっていたカリタス女子中高の仏語・英語の2言語教育についても触れられました.シスター達が遠いケベックから極東の地に降りたって創設した学校の教育に対し,フランス政府が高く評価して下さったことを誇りに思います. 過去の受勲者には中等教育関係者はほとんどいません.その意味でもたいへん喜ばしく,中等教育に携わる教員への励みになります.私は中等教育の専任教員として1982年から2006年までの24年間,非常勤講師としては1980年から1982年及び2006年から2008年までの4年間,合わせて28年間,たくさんの生徒達を育ててきました.その結果の受勲であると考えています.
 叙勲式は50名の出席者で3年前に新しくなったフランス大使館で行われました.フランス語教育の関係者以上に,中等教育,英語教育,教育工学,教育学,そして実業界の方々にいらして頂きました.叙勲式を今後のフランス語教育発展の機会としたかったからです.本学会からは,ケベック州政府在日事務所の天野僖巳文化・教育担当官にご出席頂きました.式の後はカクテルパーティーとなり,champagneの乾杯の後,交流の輪が広がりました.
 最後に,私の今後の思いについて返礼の挨拶の中で述べたことばを引用しておきます.

 《Je n’arrive pas à exprimer parfaitement mes remerciements, mais je voudrais seulement vous promettre de continuer à faire des efforts afin de contribuer à la promotion de la relation dans mon domaine de travail entre la France et le Japon, surtout au niveau du secondaire et des TIC.》

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AJEQ研究会(2/24)「ケベックのフェミニスト活動家たちの歌」 [写真]

AJEQ研究会(2/24)「ケベックのフェミニスト活動家たちの歌」(2/25)

発表者:矢内琴江(早稲田大学大学院修士課程)
日時:2012年2月24日(金)16:30-18:00
場所:明治大学駿河台研究棟4階第2会議室

発表者を紹介する山出裕子理事(左)と発表者の矢内琴江さん
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発表内容の目次
はじめに
1.ケベックにおけるフェミニズムの運動と音楽
 ・ケベックのフェミニズム運動
 ・60、70年代のケベックにおける音楽の役割
 ・ケベックのフェミニズムとシャンソン・ケベコワーズの今
2.ケベックのフェミニストたちの歌(70年代~2000年代)
 ・70年代のフェミニストたちの歌の礼
 ・2000年以降のフェミニスト活動家たちの歌(Les amère Noëlles, Les voies féministes)
 ・多様化(Mémés Déchaînées, Genr'Radical)
3.グループDissidenceの例
 ・グループDissidenceについて
 ・アルバムLe cri de l'oppriméについて
 ・エンパワーメントの可能性
結語
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研究会の様子と発表者によるビデオのプレゼン(Les amères Noëlles, Les voies féministes)
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フェミニストによるカナダ国歌(O Canada)の替え歌の歌詞
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参考
Les amères Noëlles: http://2001.reseauforum.org/node/5097
カナダ国家の歌詞:http://en.wikipedia.org/wiki/O_Canada

フィル・ウッド氏講演「インターカルチュラル・シティ」(1/20)@青山学院大学 [報告]

「インターカルチュラル・シティ---文化の多様性を活かす都市政策の実践---」(1/21)
青山学院大学国際交流共同研究センター講演会

講師:フィル・ウッド氏
日時:2012年1月20日(金)14:00-16:00
場所:青山学院大学・総研ビル3階第11会議室
主催:青山学院大学国際交流共同研究センター

司会の飯笹佐代子博士(青山学院大学国際交流研究センター)
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英語で講演するフィル・ウッド氏
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「インターカルチャリズム」の先駆的な提唱者であるフィル・ウッド氏は「インターカルチュラル・シティ」のテーマを取り上げ、都市の発展において多様な人々の交流が生み出す利益について講演を行った。

ウッド氏は、多様性を脅威としてではなくチャンスとして捉えるような意識改革の重要性を強調するとともに、ヨーロッパでこれまで取られてきた移民のための都市政策、具体的にはイギリスの「ゲストワーカー政策」、フランスの「同化都市政策」、北欧諸国の「多文化都市(マルチカルチュラル・シティ)政策」などを批判的に取り上げた。そのような移民を含む多様な人々の交流を阻害する政策を取るのではなく、都市は「インターカルチュラル・シティ」のアプローチを取るべきで、多様な人々が交流するための目的や誘因を与え、また交流の場所、制度、支援者、手段も提供する必要がある。つまり、都市は静的な機械ではなく、動的なエコシステムとしてみなされるべきで、多様な人々の交流の優位性を達成するためには、対立を抑制するのではなく明らかにしてマネージすることが望ましいというのがウッド氏の主張であった。

最後に、日本のインターカルチャリズムについての印象として、多くの日本の都市において外国人を含む多様な人々を受け入れることを阻む障害や恐怖感があることを指摘した。しかしその一方でウッド氏は、日本では多様性から生じる対立をうまく処理し、逆に多様な交流の優位性を生み出す能力をもつ都市の行政担当者や地域のリーダーたちが多くいるようであると述べ、外国人を含むすべての住民の子供たちに公的な教育を保証する宣言を行った浜松市の例を取り上げた。

講演でも質疑応答でもウッド氏が示したインターカルチャリズムに対する常にポジティブで楽観的な見方は、非常に印象的で説得力のあるものであった。それはグローバル化した世界における都市生活の将来についての希望を参加者に与えたといえよう。
(英語版):
http://japanquebec.blog76.fc2.com/blog-entry-79.html

参考:
フィル・ウッド氏のホームページ:
http://philwood.eu/
フィル・ウッド氏の著書「インターカルチュラル・シティ」:
http://philwood.eu/#/books-for-sale/4538051660

(文責:宮尾尊弘)

「現代のケベック」講座(1/17):宮尾尊弘筑波大学名誉教授 [報告]

「現代のケベック」講座(1/17):宮尾尊弘筑波大学名誉教授 (1/18)

講師:宮尾尊弘筑波大学名誉教授
題目:「ケベックから日本が学ぶもの」
日時:2012年1月17日(火)13:00-14:30
場所:明治大学リバティタワー1143教室
コーディネーター:小畑精和(AJEQ会長、明治大学教授)

コーディネーターの小畑教授と講演者の宮尾講師
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学生へのアンケートの結果に基づいて講義する宮尾講師
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(報告)
 宮尾尊弘講師(筑波大名誉教授、AJEQ会員)による講義は、冒頭受講生にアンケートを配布し、政治、経済、技術、外交、社会、文化、言語およびその他という8ジャンルに分けて、日本が最も参考として学べる分野は何か、またそう思う理由を書かせて集計したのちに、ジャンル別にケベックと日本の状況について比較定性分析を試みるという、類を見ない優れた手法によるもので、本講座シリーズの最後を飾るのに相応しい講義であった。以下要点を挙げる。

 1 先ず政治経済の分野では、日本が「失われた10年」を経験して沈滞感低迷感に覆われている一方、ケベックは21世紀に入ってからの実質成長率が13.4%(日本は3.0%)と急伸しており、NAFTAを追い風に先端産業を中心に活力に溢れた発展を見せている。その上で、今後25年にわたる壮大な北部開発プロジェクトを始動させた。そうした急成長を支えるジャン・シャレ首相率いる州政府のリーダーシップ、例えば環境税の創設、育児休暇制度の拡充、閣僚数の男女同数実現などに見られるイニシアティブも、低迷する日本の政治状況とは対照的に見える。
 2 先端産業についても、映画『アバター』の3Dの部分がモントリオールで制作されたようにマルティメディアをはじめ、宇宙航空、バイオ、ディジタル・デヴァイス面などで雄飛しており、日本が大企業中心の技術囲い込みないしガラパゴス化している現状に比して目を見張るものがある。対外関係では州独自の海外広報戦略に示されるような積極的な経済・文化外交が光っており、TPP一つ見ても意見集約不十分な日本から見ても学ぶところが大きい。
 3 文化社会面についても、カナダ連邦政府が「マルチカルチャリズム」を掲げているのに対し、ケベックでは「インターカルチャリズム」という言い方をしており、一線を画している。その意味は自己の文化を守り尊び重視することが基本となり、他文化への配慮も怠らないという生き方であり、違いを超えて共に生きるという考え方である。この点も、今後日本にとって大いに参考になるであろう。

 宮尾講師は、ケベック市制400周年記念祭やモントリオール国際ジャズフェスティバルに参加された時の印象などを語り、優れた企画の中にも自由で参加者の個性を活かした文化の祭典を活写され、コスモポリタンな雰囲気の中で独自の文化の維持発展に取り組むケベック社会の先進性を強調されたが、それはとりもなおさず閉塞感に覆われた沈滞日本の現状を深く憂えるメッセージに他ならないと受け取れた。   
(文責 池内 光久)

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