AJEQ研究会報告(5月11日)大石会員と立花会員の発表 [報告]

AJEQ研究会報告(5月11日)大石会員と立花会員の発表:(5/12)

日時:2013年5月11日(土)17:00~18:30
会場:立教大学 池袋キャンパス 本館(1号館)2階 1201教室
発表
1)大石太郎会員(関西学院大学)
「地理学からみたカナダの公用語マイノリティ―ケベック州外のフランコフォンを中心に―」
 カナダの公用語マイノリティについて、地理学の視点から紹介があった。まず、言語を研究対象とする地理学について、大西会員の専門が「言語集団を人口集団ととらえ、地域現象としその動態を研究する」地言語学(geolinguistics)であることが説明された。カナダにはフランス語母語者が約22%存在し、ケベック州に集中するものの、他州各地に居住することが、写真入りスライドを用い、具体例とともに紹介された。ケベック州とニューブランズウィック州(とくに北東部)をのぞき、フランス語母語者はすべてバイリンガル話者であり、英語を話すことを受け入れながらもフランス語を維持している。カナダにおけるバイリンガル人口は2001年をピークにほぼ横ばいで推移している(2011年は17.5%)。公用語マイノリティの言語状況には、公用語化、教育の充実等の制度的支援だけでなく、都市地域と非都市地域の格差、立地条件、産業構造の違いなどを考慮に入れて考察する必要があることが述べられた。
2)立花英裕会員(早稲田大学)
「ケベック文化の形成と知識人- ジェラール・ブシャールが見た文化的亀裂-」
ジェラール・ブシャールGerard Bouchardの著書『ケベックの生成と「新世界」』に見られるケベックの知識人のあり方に関する分析が紹介された。ケベックはその歴史的地政学的特色として、政治、宗教、経済、文化の仏・英・米への依存形態を持ち、複雑な選択を迫られてきた。以下の歴史区分により、各時期の知識人の状況が確認される。
(1) 1608-1763年(ケベック入植地建設からパリ条約まで)
 北米におけるフランスのレプリカとしてのケベック。エリートが書き言葉を通じてパリの規範にしばられる一方、民衆は新しい状況に自由に適応していった。ネイションの原初イメージの生成。
(2) 1763-1840年(ケベック植民地成立から愛国者党の反乱まで)
 イギリス文化が浸透し文化がハイブリッド化。出版活動が発達するなか、民衆と知識人のあいだに乖離が生じた時代。パピノーの乱は民衆の側に立った最初の知識人の運動であった。
(3) 1840-1940年(連合カナダ植民地成立からデュプレシ政権失脚まで)
 誤ったネイションイメージが作られた時代。「生き残り」伝説。ガルノーに代表される知識人像(アメリカ大陸の現実から目を背けた)。
(4) 1940-2000年(第二次世界大戦による国家資源動員法制定から、静かな革命、1995年州民投票まで)
 アメリカ性の自覚、フランスからの離脱の時代。ケベック知識人のジレンマ(民衆、中産階級の「アメリカ的夢」を受け入れられない)が見られる。
 このようなケベック社会の未来のあり方として、ブシャールは「文化私生児論」を唱える。自らを「第三世界」として認識し、私生児としてのパラダイムを追及することにより、異種混交の文化を実現していく、という未来像であり、カリブ海地域のクレオール文化との共通性が指摘された。
(文責:小松)
大石会員の発表
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立花会員の発表
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(写真提供:小松)
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会員による新刊紹介:小畑精和著『カナダ文化万華鏡』 [資料紹介]

新刊書紹介:小畑精和『カナダ文化万華鏡:「赤毛のアン」からシルク・ドゥ・ソレイユへ』(4/5)

小畑精和著『カナダ文化万華鏡:「赤毛のアン」からシルク・ドゥ・ソレイユへ』(明治大学リバティブックス、2013年3月、3,465円)

 拙著『カナダ文化万華鏡---「赤毛のアン」からシルク・ドゥ・ソレイユへ』が明治大学出版会から刊行されました。カナダを通して、文化を読む楽しみを味わっていただくのが出版のねらいです。多文化主義も、他者を理解しようとする好奇心がなければ、格差を放置する道具に堕してしまいます。カナダの想像力を、リアリズムとキッチュをキーワードに考察してみました。(小畑)

(以下は明治大学出版会2012年度発刊のご案内」より引用)
 『赤毛のアン』から『タイタニック』まで、J・ミッチェルからシルク・ドゥ・ソレイユまで、多文化主義を掲げるカナダ文化を初めて包括的に捉えた注目の書。想像力豊かなカナダ文化の精神的特色は、「サバイバル」にあった!
■目次
序論
(第1章 文化を語る際の留意点/第2章 リアリズムとキッチュ)
第1部 サバイバル
(第1章 M・アトウッドのサバイバル論ーー犠牲者の四つの態度/第2章 『タイタニック』ーーサバイバルの代名詞/『赤毛のアン』ーーイギリス系のサバイバル/ほか)
第2部 ありのままの現実・見えにくい現実
(第1章 アメリカ化しないカナダーー「炎と水」/第2章 フランコフォンの変容/第3章 現実と向き合う歌/ほか)
結論にかえて
(あとがき/参考文献/索引)

本書に関するサイト:http://honto.jp/netstore/pd-book_25571788.html
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AJEQ研究会報告(3月9日)廣松会員と柴野会員の発表:(3/15) [報告]

AJEQ研究会報告(3月9日)廣松会員と柴野会員の発表:(3/15)

日時:2013年3月9日(土)17:00~18:30
会場:立教大学 池袋キャンパス 本館(1号館)2階 1201教室
発表
1)(17:00-17:30)
DVD解説「Dany Laferrière作 Comment conquérir l'Amérique en une nuit.」
報告者:廣松勲会員((独)日本学術振興会特別研究員PD、慶應義塾大学総合政策学部訪問研究員)
2)(17:30-18:30)
研究発表「ケベックのオートマティスト―『全面拒否(Refus Global)』とその背景―」
報告者:柴野宣子会員(早稲田大学文化構想学部4年)

 前半には、ラフェリエール監督・演出・脚本の映画作品『一夜にしていかにアメリカ大陸を征服するか』を廣松会員の解説付きで約20分間観賞した。ラフェリエール出世作である小説『ニグロと疲れないでセックスする方法』(立花副会長による邦訳が最近出版された)と通じるテーマを扱っているが、本作品ではモントリオールにおける移民・亡命者たちの文化的な同化・異化を描き出すことにより焦点が当てられている。物語構造としては、「空間の移動によって、別の場所で異なる事物と遭遇する物語」に分類されるとの解説があった。映画冒頭の三人の主要人物が登場する場面を視聴し、該当部分のシナリオが配布された。

 後半では、柴野会員が最近早稲田大学に提出した卒業論文研究をもとにした発表があった。発表の流れは次のとおりであった。
1. オートマティストグループの概要(メンバー/オートマティスムトは?)
2. オートマティストグループの活動歴(ポール=エミール・ボルドゥアの生い立ち/オートマティストグループが形成されるまで)
3. 『全面拒否』
4. 現代の視点から見た『全面拒否』
 1940年代に活躍したケベックの前衛芸術家集団オートマティストは、1948年に『全面拒否』を発表した。保守的なケベック美術界の在り方を告発し、より自由な芸術表現を求めたこのマニフェストは、当時のケベック社会そのものを批判するものとして、メディアによる強い批判にさらされた。本発表では、『全面拒否』発表にいたった経緯、マニフェストの内容、今日のケベックでの評価を紹介することにより、彼らの行動が「静かな革命」に先行するものとしての意義を持つことを示した。多数の仏語・英語文献を参照し、卒論とは思えないレベルの高い研究であった。
(文責:小松)
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(写真提供:小倉)

AJEQ研究会報告(12月8日)「ケベックとフランコフォニー」 [報告]

AJEQ研究会報告(12/8)「ケベックとフランコフォニー」:(掲載12/15)

日時:2012年12月8日(土)17:00~18:30
報告タイトル:「ケベックとフランコフォニー」 
報告者:長谷川秀樹会員(横浜国立大学) 
会場:立教大学 池袋キャンパス 本館(1号館)2階 1201教室

 見事なクリスマスツリーが点灯する立教大学池袋キャンパスにて2012年12月8日、今年度3回目のAJEQ研究会が開催された。
 研究会に先立ち、矢頭会員の司会により30分間にわたりクリスマスをテーマにしたお楽しみ会が催された。ケベック州政府提供のパワーポイント映像でケベックのクリスマス風景を堪能した後、クリスマスソングをフランス語で3曲歌い、ケベックでのクリスマスの思い出を語り合った。
 その後、「ケベックとフランコフォニー-フランコフォニー成立後期におけるケベック」と題し長谷川会員による研究発表が行われた。国際組織としてのフランコフォニーの成立後期に見られたケベックとカナダ連邦との間の葛藤を、詳しい調査に基づきわかりやすくまとめた発表であった。
 長谷川氏は、フランコフォニーの成立期を、Esprit誌特集号でサンゴールがフランコフォニーについて言及した1962年10月から、ACCT(文化技術協力機構)発足の1972年3月までとし、なかでもガボン会議(1968年2月)以降を成立後期と定義した。
 同氏はこの成立後期をさらに以下の4つに区分して、ケベックとカナダ連邦の関係を検討した。
1.1968年1月~4月:ケベック―カナダの対立のはじまり
2.1968年4月~9月:対立の激化、複雑化
3.1968年9月~12月:状況の変化、カナダ政府の巻き返し
4.1969年:妥協と歩み寄りへ
 アフリカ諸国とケベックとの間の利害の一致によりフランコフォニー設立計画が進んでいたところへ、カナダ連邦の参加により事情が複雑化し、ケベックとカナダのあいだの対立が深まっていった過程、フランスおよび他のフランコフォニー諸国の反応、両者の歩み寄りまでの事情が詳述された。(文責:小松)

お楽しみ会と研究会の様子
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(写真提供:小松)
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ブシャール教授の講演会@京都大学(12月12日) [お知らせ]

ブシャール教授(ケベック大学シクチミ校・歴史学)講演会@京都大学
(西山教行京都大学教授よりの情報を転載)

2012年12月12日(水)14:45-16:15,
吉田南総合館216演習室
フランス語による,逐次通訳あり(無料)
(ご来場の際はご連絡いただければ幸いです)

ケベックにおけるナショナル・アイデンティティの再定義について
ジェラール・ブシャール(ケベック大学シクチミ校・歴史学)

 この講演では,まずアイデンティティの概念について簡潔に考察の上,その定義を行う。これを踏まえて,この50年の間にケベックで行われたナショナル・アイデンティティの大きな変容を振り返る。主としてこの変容は,移民の流入をうけた,ケベックのエスニックな文化の多様化により行われたものである。1960年代ならびに1970年代より,ケベックのフランス語話者はもはや一つの均質なネイションとして自己規定ができなくなったため,アイデンティティの見直しが必要になったのである。
 これにより,ケベックはさまざまな課題に直面したが,それらは当時,西洋の他の多くのネイションにも認められるものであった。それは,集団的記憶について,基本的価値観について,将来への展望や市民生活の規範について,これ以降,どのようにして合意を形成できるのかという課題である。また脱宗教的な社会の理念と,移民の導入したさまざまな宗教との共存をどのように両立するのかとの課題でもある。言い換えるならば,どのようにして歴史的継続性や,ネイションの創成神話を保持させるため,またさまざまな価値観と伝統,アイデンティティ,世界観を調和させるため,どのようにネイションを再定義できるのかという課題なのである。
 ケベックは,現在このように困難な営みに関与している。そのためにケベックが参考とするモデルは「間文化主義」であり,それはこの数十年の間に作りあげられたものである。講演の最後では,このモデルの重要な特徴について言及する。

参考文献
ジェラール・ブシャール著 立花英裕 [ほか] 訳(2007)『ケベックの生成と「新世界」:「ネイション」と「アイデンティティ」をめぐる比較史』彩流社
ジェラール・ブシャール, チャールズ・テイラー編 竹中豊, 飯笹佐代子, 矢頭典枝訳(2011)『多文化社会ケベックの挑戦:文化的差異に関する調和の実践ブシャール=テイラー報告』明石書店
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会員の活動報告(廣松勲会員) [報告]

会員の活動報告(廣松勲会員):(12/2)

廣松勲: (独)日本学術振興会特別研究員PD/慶應義塾大学総合政策学部・訪問研究員

最近の活動に関してご報告いたします。

1)2012年5月:
 モントリオール大学に博士論文(Mélancolie postcoloniale : relecture de la mémoire collective et du lieu d’appartenance identitaire chez Émile Ollivier et Patrick Chamoiseau)(フランス語)を提出し、無事受理されました。指導教官はAJEQの大会にも参加して頂いたLise Gauvin名誉教授でした。
 参照サイト:https://papyrus.bib.umontreal.ca/jspui/handle/1866/7134(本ページからダウンロードもできます。)

2)2012年5月9日(水):研究発表(フランス語)
 モントリオールで開催された第80回ACFAS (Association francophone pour le savoir)学会において、« Remémoration créative de l’enfance dans Antan d’enfance, Chemin-d’école et À bout d’enfance de Patrick Chamoiseau »(セッション名「Poétique de l'enfance : perspectivves contemporaines」:responsable de la session : Kodjo Attikpoé)と題した研究発表を行いました。
 参照サイト:
http://www.acfas.ca/evenements/congres/programme/80/300/350/c

3)2012年9月:研究論文(フランス語)
Lise Gauvin名誉教授が編纂なさった論文集Émile Ollivier : un destin exemplaire(Montréal, Mémoire d'encrier、coll. "Essai")に、拙論« La correspondance avec les éditeurs : histoire éditoriale des œuvres d’Émile Ollivier »(p.119-142)が掲載されました。
 参照サイト:http://memoiredencrier.com/emile-ollivier-un-destin-exemplaire/

4)2012年11月3日(土):研究発表(日本語)
 盛岡、岩手県立大学アイーナキャンパスにて開催された、日本フランス語フランス文学会東北支部会において、「パトリック・シャモワゾーにおけるトランスカルチャー:記憶の伝達から伝達の記憶へ」と題した研究発表を行いました。.
 参照サイト:http://www.sjllf.org/jofg69lp9-15/?block_id=15&active_action=journal_view_main_detail&post_id=364&comment_flag=1

5)2012年11月24日(土):研究発表(フランス語)
 ソウルの成均館大学にて開催された、2012年度ACEQ(Association coréenne d'études québécoises)学会に、立花英裕副会長と参加し、« Espace et identité : la description spatiale chez Émile Ollivier »と題した研究発表を行いました。
 参照サイト:http://quebec-coree.blogspot.jp/(ACEQの活動などを見ることのできるサイトです。)
 なお、「2012年度韓国ケベック学会コロック参加報告」(立花英裕副会長、廣松勲会員)は、このブログの以下の記事をご覧ください:
http://ajeq.blog.so-net.ne.jp/2012-12-02

6)2012年11月29日(木):逐次通訳(日仏語双方)
 仙台の東北大学にて開催された、日仏両国の小説家Éric Faye氏と堀江敏幸氏による公開討論会「現代に呼応するジャンルとはなにか?」において、日仏両言語の逐次通訳を行いました。ちなみに、本会は2012年度フランス語圏文学フェスティバル「読書の秋」の一部です。
 参照サイト:http://alliancefrancaise-sendai.org/ja/events/

以上です。
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2012年度韓国ケベック学会コロック参加報告 [報告]

2012年度韓国ケベック学会コロック参加報告 (12/2)

参加者:立花英裕副会長、廣松勲会員

Colloque de l’Association Coréenne d’Études Québécoises

Date : le 24 novembre 2012 : 14:00 ~ 19:00(予定終了時間は18 :00)
Lieu : Université Sungkyunkwan (Salle de Toegye, Bâtiment des sciences humaines, salle 31709)
Organisation : Association Coréenne d’Études Québécoises
Hôtes : Centre des Études Francophones de l’Université Sungkyunkwan
Parrainage : Bureau du Québec à Séoul, Université Sungkyunkwan
(プログラムは写真の下に掲載)

報告(立花英裕副会長、廣松勲会員):
2012年11月24日(土)に、韓国ソウルの成均館大学にてACEQの年次コロックが開催されました。滞在中は、大学直近にあるInternational Houseという大学のゲストハウスに滞在させて頂きました。また、学会前夜には、Lee Jisoon先生やHan Yongtaek先生に三清洞(サムチョンドン)にある伝統料理のレストランにも連れて行って頂きました。
当日の早朝には、コロック開始時間が午後14時(受付は13時半~)ということもあり、成均館大学の学生に案内してもらい、構内の一部を見学することができました。丘陵にある大学構内には、歴史的建造物も多く保存されており、とても興味深い散策となりました。また毎週末には伝統的な結婚式が行われるということで、短い時間ながらも式を見学しました。
12時過ぎからは、ACEQの現会長Lee Jisoon先生(成均館大学)や前会長Han Daekyun先生(清州大学)、学会当日直前まで様々な連絡をして頂いたHan Yongtaek先生(檀国大学)、さらに幹事長のLee Insook先生(漢陽大学)やChung Jiyong先生(成均館大学)と一緒に、学食の教職員食堂にて昼食を頂きました。その後、全員で会場に徒歩で向かいました。
14時を少し過ぎて、コロックが始まりました。参加者は20人強ほどでした。まず第一部は、廣松によるエミール・オリヴィエに関する発表と立花英裕副会長によるダニーラフェリエールに関する発表(いずれもフランス語)が行われました。
廣松勲会員の発表は、エミール・オリビエの小説Passages、La Brûlerieを中心に、モントリオールに亡命の日々を送る人々の存在のあり方やアイデンティティを問うものでした。発表において重点がおかれた小説La Brûlerieは亡命知識人が集まるカフェの名前でもあり、モントリオール大学近く、la Côtes-des-Neigesの通りに面したカフェを舞台として、そこに集まる人々の日常描写と彼らの言葉、それを通して見えてくる、帰還への想いが募る祖国ハイチと、通過の土地モントリオールとの間に開かれる空間の構造が詳細に分析されていました。コメンテーターの KIM氏からはutopieとdystopieについて質問が出るなど、会場との意見交換も含めて、内容の濃い、充実した発表でした。
立花英裕副会長のご発表は、2011年10月に初来日を果たしたダニー・ラフェリエール氏の処女作『二グロと疲れないでセックスする方法Comment faire l’amour avec un nègre sans se fatiguer ?』を主たる分析対象としたものでした(本作は2012年12月に副会長による邦訳が刊行予定)。特に作家としてのラフェリエールの誕生や本小説の物語世界が、どのようにモントリオールという都市空間の文化的交流・多文化性と関連するのかを、時に映像資料も用いながら論じられました。会場からは時折笑い声が上がり、とても興味深い発表でした。
その後、一時の休憩をはさみ、第二部ではAntoine Coppola先生(成均館大学)による「シネマディレクト」に関する発表(フランス語)が行われ、次に、Ko Hyesun先生(韓国外国語大学)によるミシェル・トランブレイに関する発表(韓国語)、そしてLee Jisoon先生とLee Jooyoung先生(成均館大学)によるワジディ・ムアワドに関する発表(韓国語で、発表者はLee Jooyoung先生)がありました。
 コロック終了後は、大学から少し離れた大学路(テハンノ)近くにあるレストランにて第一次懇親会が行われ、その後引き続き第二次懇親会が行われました。コロック中には話すことのできなかった先生方と交流を深めることができ、とても楽しい時間を過ごすことができました。
コロックの前段階から当日に至るまで、ACEQの方々には様々な形でおもてなしをして頂きました。改めて深謝をさせて頂きたいと思います。
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夜の正門
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明倫堂
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600周年記念館
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立花副会長の発表
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廣松会員の発表
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Programme :
◇◆ Colloque de l'Association Coréenne d'Études Québécoises ◆◇
◇ Fécondité et hétérogénéité culturelle ◇

Date : le 24 novembre 2012, 13h30∼18h
Lieu : Université Sungkyunkwan (Toegye Hall of Humanities, salle 31709)
Organisation : Association Coréenne d'Etudes Québécoises
Ho_tes : Centre des Etudes Francophones de l'Université Sungkyunkwan
Parrainage : Bureau du Québec à Séoul
Université Sungkyunkwan

PROGRAMME DU COLLOQUE

13:30~14:00 Inscription
14:00~14:10 Paroles d'inauguration - Ji-soon LEE(Univ. Sungkyunkwan, présidente de l'ACEQ)

1ère Session Modérateur : Choong-hoon LEE (Univ. Hanyang)
14:10~14:50
◇ Espace et identité : la description spatiale chez Émile Ollivier
- Isao HIROMATSU (Societe Japonaise pour la Promotion de la Science)
débatteur : In-kyung KIM (Univ. Feminine Seoul)
14:50~15:30
◇ Dany Laferrière et l'espace urbain
- Hidehiro TACHIBANA (Univ. Waseda)
débatteur : Ok-keun SHIN (Univ. Nationale de Kongju)

15:30~15:50 Pause

2ème Session Modérateur : Yong-cheol LEE (Univ. Ouverte Nationale de Corée)
15:50~16:30
◇ Le cinéma-vérité dans le film « La Lutte » de Michel Brault
- Antoine COPPOLA (Univ. Sungkyunkwan)
débatteur : Heui-tae PARK (Univ. Korea)
16:30~17:10
◇ La littérature fantastique québecoise dans les années 60 et Michel Tremblay
- Hye-sun KO (Univ. Nationale de Seoul)
débatteur : Joong-hyun KIM (Univ. Hankuk des Etudes Etrangeres)
17:10~17:50
◇ Le silence et l'écriture dans « Incendies » de Wajdi Mouawad
- Ji-soon LEE/Joo-young LEE (Univ. Sungkyunkwan)
débatteur : Ki-hyun PARK (Univ. Nationale de Chonnam)

17:50~18:00 Debat et Clôture
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会員による新刊書紹介『カナダを旅する37章』 [資料紹介]

会員による新刊書紹介『カナダを旅する37章』(10/28)

飯野正子・竹中豊/ 編著『カナダを旅する37章』(明石書店、2012年10月31日、2,000円+税)
 本書は旅行ガイドブックではありません。ありきたりの入門書では物足りず、もっと刺激的で「知的な」カナダを知りたい、という読者を対象として編まれたものです。執筆者は、AJEQメンバーを含めてカナダやケベック研究を代表する総勢25名。
 本書の構成は、あるテーマに沿ってカナダを「知的に」旅していく筋立てになっています。まずは、カナダのアイデンティティ探索の「旅立ち」からはじまり、続けて「歴史」、「都市」、「多文化社会」、「政治舞台」、「英系・仏系文学」、「日系人の今昔」、そして「アーツ」に至るまで、幅広いテーマが扱われています。純粋アカデミズムの堅苦しさはなく、最新情報も盛り込みながら、全体にその筆致は柔らかで、読みやすい工夫がなされています。写真も豊富。
(竹中 豊)
本書に関するサイト:http://www.akashi.co.jp/book/b104866.html

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2012年度大会を終えて:立花英裕AJEQ副会長 [報告]

日本ケベック学会2012年度大会を終えて

立花英裕(AJEQ副会長)

 去る10月6日(土)、早稲田大学の早稲田キャンパス8号館で、日本ケベック学会年次大会が開催された。最近は、学会活動といえども大学の施設を自由に使える余地が限られており、早稲田大学を大会会場としてお引き受けすることに一抹の不安がないわけではなかった。しかし、なんとか程よい広さの、設備の比較的整った会議室が確保できた。会場の内装や雰囲気は、発表や討議にも微妙な影響を与えるものである。万が一の落ち度がないように蓋を開けるまで冷や冷やしていたが、なんとかほぼ順調に大会が進行したようなので、安堵の胸を撫で下ろした次第である。
 今回の大会は、2009年から数えて4回目にあたる。2009年大会はガブリエル・ロワとライシテという二つのテーマを掲げていた。2010年大会は、Lise Gauvin 教授の講演を一種の基調講演としてケベック文学を移動と定住の観点から検討した。2011年大会は、UNIFAとの共同開催となり、Micheline Milot教授と作家Dany Laferrière氏を招聘することができ、幾分派手な大会になったことが思い出される。そして今回の2012年大会だが、昨年ほどの出席者数には達しなかったものの、予想を越えた人たちが集まり、熱意と緊張感に溢れた大会になったことは喜ばしい。NHKラジオ国際放送(フランス語)からの取材も受けたことを、ご報告しておく。
 昼食時の雑談になるが、州政府事務所の天野さんの報告によると、Charron代表がプログラムを見て、今回初めてテーマをもった大会になったと感想をおっしゃったそうである。これまでの大会にもテーマがなかったわけではないが、たしかに今回はテーマ性をより強く打ち出すように心がけていたのである。それがCharron代表にも伝わったということは、準備する側の自己満足に終わらなかったことの証なのかもしれない。ドゥニーズ・ダウ名誉教授の基調講演とシンポジウムによって構成された「フランス語憲章35周年」をめぐる発表と討議は、各発表者の発言がかみ合い、補完し合い、密度の濃いものであった。とりわけ、基調講演の司会・通訳を担当し、かつシンポジウムでも充実した発表をされた矢頭典枝理事の活躍は目覚ましかったというのが、ひいき目かもしれないが、筆者の偽らざる感想である。シンポジウムに限らず各発表者の話を聴いていると、ケベックだけに限定されない視野がどこかに感じとられ、それが発表に緊張感を与えているように思えた。ケベック研究の存在理由を公に認めさせるにはどうしたらよいのかを、各自が密かに問うているからではないだろうか。
 大会に変化をつけるために「ケベックのコンテンポラリー・ダンス」について岡見さえ会員に講演していただいたが、映像をふんだんに見せていただいただけでなく、学会にふさわしい学術的な分析も聴かせていただき、ケベックを越えて、現代のダンスについて理解を深めてくれる内容になっていた。
 韓国ケベック学会ACEQから大会に参加してくださったHan Yongtaek氏やLee Sinja氏の発表も刺激的で、日韓両学会の交流のもつ意義をあらためて認識させるものであった。
 大会の発言者全員に触れることはできないが、閉会式では竹中豊副会長が「この学会には勢いがある」とおっしゃっていた。この「勢い」をこれからも持続したいものである。
以上
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日本ケベック学会2012年度全国大会:AJEQ Congrès annuel 2012 [写真]

AJEQ 2012年度全国大会(2012年10月6日)於早稲田大学
Congrès annuel 2010: le samedi 6 octobre 2012 à l'Université Waséda

10:00-10:15 開会 Ouverture
立花英裕(早稲田大学教授、AJÉQ副会長):クロード=イヴ・シャロン(ケベック州政府在日事務所代表)の挨拶
TACHIBANA Hidehiro (Université Waseda, Vice-Président de l’AJÉQ):
Claude-Yves CHARRON (Délégué général du Québec au Japon)
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10:15-11:30 自由論題セッション Communications
司会: 寺家村博(拓殖大学);Modérateur: JIGEMURA Hiroshi (Université Takushoku)
(1) 山出裕子(明治大学)「ケベックの移民文学にみられる間文化主義の影響:アジア系移民女性作家の作品を例に」 ;YAMADE Yuko (Université Meiji)
L'influence de l’interculturalisme dans la littérature québécoise contemporaine: Une analyse d’œuvres d’écrivaines migrantes d’origine asiatique
(2) 佐々木奈緒(明治大学大学院)『お邪魔?』と『アレクサンドル・シュヌベール』にみる病院―個人と現代社会―」;SASAKI Nao (doctorante, Université Meiji)
L’hôpital dans Est-ce que je te dérange ? et Alexandre Chenevert : un humain et une société moderne
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11 :30-12 :00 特別報告 Communication spéciale(フランス語)
司会: 寺家村博(拓殖大学);Modérateur: JIGEMURA Hiroshi (Université Takushoku)
HAN Yongtaek (Université Konkuk) 「韓国における『ケベック事典』出版計画」;
Le Projet de publication de l’Abécédaire du Québec en Corée
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13 :00-14 :00 ケベックのコンテンポラリーダンス:映像と解説
Danse comtemporaine au Québec : images et commentaires
司会:安田敬(ダンスカフェ主宰);Présentateur: YASUDA Kei (Dance café)
岡見さえ(上智大学)「ラ・ラ・ラ・ヒューマン・ステップスー革新の30年」
OKAMI Sae (Université Sophia) LA LA LA HUMAN STEPS―30 ans d’évolution artistique
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14 :15-15:15 基調講演 Conférence (フランス語)
紹介・司会・通訳:矢頭典枝(神田外語大学);Présentatrice, modératrice et interprète: YAZU Norie (Université Kanda des Etudes Internationales)
講演者 ドゥニーズ・ダウ(ケベック大学モントリオール校)「フランス語憲章制定から35年:ケベックのフランス語をめぐる状況」;Denise DAOUST (Université du Québec à Montréal)
Qu’en est-il de la situation du français au Québec, 35 ans après l’adoption de la Charte de la langue française?
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通訳:加納由起子(神戸女学院大学);interprète: KANO Yukiko (Université Kobe Jyogakuin)

15:30-17:15 シンポジウム Colloque
「フランス語憲章35周年―ケベック社会のゆくえ」;35 ans après l’adoption de la Charte de la langue française:L’avenir de la société québécoise
司会:小松祐子(筑波大学);Modératrice: KOMATSU Sachiko (Université de Tsukuba)
(1) 矢頭典枝(神田外語大学)「フランス語憲章の社会言語学的分析―言語計画論、言語選択、言語接触の観点から」;YAZU Norie (Université Kanda des Etudes Internationales) Analyse sociolinguistique de la Charte de la langue française : du point de vue de la théorie de planification linguistique, de choix des langues et de contact des langues
(2) 丹羽卓(金城学院大学)「マルチナショナリズムとケベックのネイション化に占めるフランス語の中心的地位」;NIWA Takashi (Université Kinjo-Gakuin) Le Multinationalisme et la centralité de la langue française pour la nationalisation du Québec
(3) LEE Sinja (Université Sungkyunkwan) 「エクリチュールから見たコミュニケーション言語の社会的機能:ケベック詩人ジル・エノーの作品をめぐって」(フランス語);La fonction sociale de la langue de communication selon l'écriture, dans Signaux pour les voyants ; poèmes 1941-1962 de Gilles Hénault, poète québécois
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討論者 :竹中豊 (カリタス女子短期大学);Commentateur: TAKENAKA Yutaka (Institut universitaire Caritas)
Commentatrice:Denise DAOUST (Université du Québec à Montréal)
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17:30-18:00 総会 Assemblée générale
(以下総会の様子)
開会(竹中)と議長(山崎)選出:
報告事項:活動報告(矢頭)、各部署報告(立花、長谷川、宮尾)、運営細則改訂報告(小倉)、入退会報告(矢頭)、会長代行について(小倉)、新役員体制報告(小畑)
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審議事項:2011年度決算(小松)、監査(曽田)、2012年度概算予算案(小松)、2013年度事業活動計画(矢頭)、第5回AJEQ大会開催校(小倉):関西学院大学で日程は未定
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議長解任と閉会(竹中)
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18:00-18:10 閉会 Clôture
総合司会:伊達聖伸(上智大学);DATE Kiyonobu (Université Sophia)
閉会挨拶:小畑精和(明治大学、前AJEQ会長);OBATA Yoshikazu (Université Meiji)
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18:30-20:00 懇親会 Soirée amicale
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